酒乱観察記

アル中疑いの父親を持つ娘の観察記

母について

次は母のこと。

母は父と違って酒が嫌いだ。

全く飲まないし、酔ったこともないらしい。

その原因は、母の母にあると本人が言っていた。

 

私の祖母は、医者からお墨付きを頂いたアル中だった。

今は、アル中と認知症のせいで、10年ぐらい精神病棟に入院している。 

時々お見舞いに行くが、初めて行った時は衝撃だった。

まるで監獄のような、異様な雰囲気が怖かった。

 

色んな所にドアがあり、全てにロックが掛かっており、開けてもらうには、職員さんに電話をして開けてもらうか、看護師さんと一緒に出入りしなければいけない。エレベーターも、鍵がないと動かない。

 そんなところに、祖母は、祖父が亡くなってから数年後に入った。

そして、痴呆と長年のアルコールのせいで、もう回復しないだろうと言われていた。

脳梗塞も起こし、半身不随になった。

 

でも、ここ数年、回復してきている。

 

会いに行くと、嬉しそうに笑い、孫である私の名前を呼んでくれる。

簡単なことであれば、普通に会話を交わすこともできるし、ちんぷんかんなこともあまり言わない。

耳は遠いけど、聞き取れたら会話をしてくれる。

また、差し入れのプリンやゼリーを食べさせてあげると、美味しそうに食べる。安いやつだと怒るので、ケーキ屋さんで買って行かなきゃいけないが。(笑)

 

こういったことは、数年前まで考えられなかった。

ちょっと前まで、孫の名前も子どもの名前も忘れ、なぜ入院しているのかも理解ができていなかった。

もうとっくに亡くなっている自分の親や親戚の名前を呼んでばかりだった。

 

なぜ痴呆がここまで回復したのかは分からないが、もしかして、酒が飲めないから回復したのかも??

祖父がまだ生きていたとき、普通に家で主婦をしていた時よりも、ちゃんと話が通じているような気がする。

あの時は、たとえ孫がいるときでも、夜にはちょっと酔ってたよな〜と思うし・・・。

 

痴呆が酒が抜けたお陰で回復したのかは分からないが、明らかに、入院する前のアルコールを飲むことが習慣だった頃よりも、顔つきがハッキリしている。

泥酔したドロ〜ンとした目が、今ははっきりしている。ちゃんと開いている。

これは確実に酒を飲まないお陰じゃないだろうか???

これは私の希望的観測だが、

酒が完全に抜ければ、何歳からでも回復できるんじゃないだろうかと思っている。

だからこそ、父には今のうちにやめてもらいたい。

 

祖母はもう90歳近いので、退院することはできないと思う。

でも、死ぬまで、子どもや孫の名前と顔を忘れないでほしいと願っている。

 

 

話を母に戻すと、母は小さい頃からこの自分の母親のアルコールに悩まされていた。

母によると、祖母がアルコールに溺れたのは、自分の子どもを交通事故で亡くしてからだという。

もし生きていれば私の叔母に当たる人を亡くしてからは、仕事終わりに毎日のように飲んでいたとか。

母の実家は自営業で、高度経済成長で金を儲けていたこともあり、家には常に友達や従業員がいて、週末になると酒盛りをしていたとか。

そして、酔った勢いで、誰かが自宅の2階から外に向けてトイレをしていたこともあったとか!

そんなことばかりする祖母の尻拭いは、長女の母が全てしていたらしい。

例えば、祖母が酒に酔って吐いたり壊した物を、母が片付けたり。年の離れた弟の面倒を代わりに見たり・・・。

今だったら、警察や児相に通報されてもおかしくないことがたくさんあったようだ。

祖母に何度も飲酒をやめるよう言っても、「自分の金で飲んで何が悪い」と開き直っていたとか。まるでうちの父と同じだ。

 

家の中は常に酒の甘い匂いがしていたらしく、母は今も酒の匂いが嫌いと言っている。

そんな母と、しょっちゅう飲んでる父とは折り合いが悪く、よくケンカしている。

というか、父が酔った勢いでわけのわからないことを言いつつ、家で仕事中の母に絡んでる感じだ。

 

母は、主に通訳の仕事をしていて、朝から晩まで忙しい。

会社勤めをしているわけではないが、家に帰ってきても、仕事の後始末や次の仕事のための勉強をしている。

そういう仕事を、私たち子どもが小さかった頃からずっとしている。

もちろん、家事もゴミ出し以外は全て自分でやっていた。

育児もずっと、ワンオペ状態だったらしい。

最近は、私たち子どもが料理を作ったり、洗濯物をやったりすることが多い。

 また、父は車の運転ができないため、これも母がずっとやってきた。

今は、私たち子どもが全員車を運転するので、助手席に座れることをとても喜んでいる。

 

話が逸れたが、要するに、父が酒に酔っている時間も、母は何かしらの仕事をしているということだ。

父と同じように外で働き、家に帰ってからも家事や勉強に追われている横で、 父が泥酔して絡んでくるのだ。

しかも自分自身は全く酒を飲まず、理不尽なことでキレたりしない。

だから、泥酔した父に絡まれるのが物凄くストレスだと言っていた。

 

酒に逃げるなんて人生で一度もしたことがない母にとって、職場の人間関係のストレスを酒に酔って忘れようとしていることは、理解できないといつも言う。

酔ってもどうせ何も解決しないでしょ、と言っている。

私もその考えに完全に同意するが、父は、そうやって論理的なことを言われるとキレる。

シラフの時ですらキレるし、酔ってる時にそういうことを言うと、手がつけられないぐらいにキレて物に当たり散らす。

図星だからか、女子供に偉そうなことを言われたくない!と思っているフシがあるのでそれが原因かは分からないが、とにかく全く聞く耳を持たない父に対して、母はもう何も言う気が起きないと言っていた。

 

私から言わせれば、どうしてアルコールにトラウマを持っている人に配慮ができないのかと思う。

「自分の金だ、飲む権利がある」といつも言うが、それならば、こちらにも嫌な気持ちにならない権利があるはずだ。

なぜ、自分の権利とやらには敏感なクセに、他人の権利には鈍感なのだろう。

なぜ、こんなにも迷惑をかけているのに、母に構ってもらえると思っているんだろう。

もう謎しかない。

 

 

次は私たち、子どものことについて書きます。